2日目

深夜1時
「ママ〜おなか痛い〜〜〜」
同室(6人部屋)の男の子の泣き声で目が覚めた。
点滴の速度を確認する看護士さんは1時間おきに巡回に来る。
シャーッとカーテンがひかれる音、懐中電灯の明かり。
そして時折聞こえる腹痛を訴える男の子の声。
昨日の睡眠不足でその声を夢うつつに聞きながら朝を迎えた。
6時30分 起床 朝の検温&吸入
行動を始めた息子はやはりプレイルームへ直行。ひとしきり暴れているとプレイルームから旦那が見えた。
私の朝食を運んでくれたのだ。24時間の付き添い義務があるのに食事は各自で用意することになっている。
旦那に促された息子はしぶしぶ部屋に戻った。
8時 朝食 ジャムをつけたロールパンを二口。スープを一口。
旦那を送り、息子の行動は相変わらずプレイルームと病棟の廊下の探検。
そしてまた点滴の管をはずしてしまった。
後で聞いた話だが、この点滴のジョイントは改良されたストッパーがついていて、
多少引っ張られても抜けることがないらしい。
しかも今まで(いつから使っているんだ?)抜いた人(子供)はいないと。
プレイルームで遊んでいると回診の先生が来た。
病室を離れていることをとがめるでもなく、やんわりと息子に近づき聴診器をあてる。
私はこの元気ならもう大丈夫だから退院といわれると思ったのに、
「ここ(喉元の鎖骨と鎖骨の間の部分)が呼吸をするたび凹むでしょ。
この状態では点滴ははずせないんですよ。」
息子の行動にあわせ点滴スタンドをあしらい、睡眠不足と行きたい時に行けないWCでいらついていた。
息子の肩より少し高いベットの柵は、息子を一人で置いておくのには危険すぎた。
器用に足を上げ、自分の体重をしっかりと両手で支えよじ登るのだ。
そして叫ぶ。とても一人にしておけない。
そんな時、義理母が娘を連れ3連休を利用し相模原市から遊びに来ていた(娘に取っては従兄妹達と会える事を楽しみにしていた)義理姉と甥姪が来てくれた。
昼食
義理母が差し入れてくれたふりかけ&味付け海苔でご飯を少し食べる。
その隙に私は自宅へ戻った。
車を運転している間、開放感で一杯になった自分を責めてみた。
でも、それが本音だから仕方がない。
本当に息子は入院患者なのか?こんなに病室にいない子供がここにいていいんだろうか?
義理母と交代し、つかの間の休息は終わった。
ナースステーションの前に何本ものアニメのビデオテープが並べらている。
「かりていくときはノートにかいてね。」
その棚の前で息子が物色をする。
「ばずらいとぃやー!」
「それは見たことがあるから違うのにしようよ。」
少しでも変化のあることがしたい私は違うビデオテープを差し出した。
「や!ばずらいとぃやー いいの!」
自宅にあり何度も見返したことがある題名をノートに記入し病室に戻る。
この病室にはテレビデオが組み込まれたロッカーが一床ごとに設備されている。
そして料金はカード公衆電話のようにプリペイドカードを買うシステムになっている。
お見舞いでこのテレビデオを何度も見たことがあるけど、まさか自分が使うとは夢にも思わなかった。
ビデオは10分ぐらいで飽きてしまう。そしてまた点滴スタンドを引きずり散歩。
この繰り返しで夕食時間が来た。
夕食 味付け海苔でご飯を半分。義理母の差し入れの肉じゃがを沢山食べて病院食のおかずは手をつけない。
夕食後、またビデオと散歩とプレイルームを行ったり来たりで消灯時間が来た。
薄暗くなった病室でボリュームを絞り息子を抱えビデオを見せた。
今日は比較的静かにビデオを見ていたが、時折声を上げる。
「だから小さい声でしゃべりなさい。」
必死に言ってみたものの息子にはまったく理解されない。
10時45分、ビデオを見ながら寝てしまった。
そっとベットに移し、私はどうやって寝よう。付添い用の折りたたみベットがあるが、これはどうやったら広げられるだろう?
でも夜中に泣かれてベットを移るのは面倒だからやっぱり添い寝だな。
寝付いた息子をベットに移し、私が見たくて借りてきたビデオを回した。
しかし再生10分ともたずに私はそれを見るのをやめてしまった。
”A、I”
公開当初から気になっていたもので、息子が選ぶアニメのビデオにまぎれて借りてきのだが、
今この場で見るにはとても切ない始まり方をしていた。
睡魔にも勝てなかった。
息子がのびのびと寝ているベットの隅に、柵にもたれかかる様に横になった。

準備中  

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